地図上のあらゆる地点で飲み物を楽しむ人たちの絵

緑茶のトクホ「綾鷹 特選茶」開発秘話「トクホでも美味しい緑茶」ができるまで

シロクマとコカ・コーラ東京研究開発センター製品開発部門の鈴木卓人さん

お客さまの健康的な生活に寄り添うことのできるおいしい機能性飲料をつくり続けていきたい

日本のコカ・コーラ社から初めてトクホ飲料が誕生したのが2004年。今年(2017年)の3月には、満を持して「コカ・コーラ」ブランド発のトクホ(特定保健用食品)「コカ・コーラ プラス」が発売され、その後も次々と機能性を持った「保健機能食品」が発売されています。その背景となる研究開発とこれからのビジョンを、コカ・コーラ東京研究開発(R&D)センター製品開発部門の鈴木卓人さんに伺いました。

「コカ・コーラ」ブランド発のトクホ 反響の大きさにニーズを再認識!

ーー 日本コカ・コーラでは、これまでも人々の健康に注目した飲料を開発してきましたが、今年は、待望の「コカ・コーラ」ブランドのトクホ飲料「コカ・コーラ プラス」が発売になりました。その反響はいかがでしたか?

鈴木 「コカ・コーラ」からトクホが出るという期待感からか、おかげさまで発売前から話題になり、大きな反響をいただきました。そして現在、トクホの炭酸カテゴリーでNO.1のシェアになりました。「コカ・コーラ」ならではのおいしさと、トクホの「コカ・コーラ」という話題性や新規性が評価されたのではないかと思っています。

ーー 「コカ・コーラ プラス」は、製品開発にかなり時間がかかったと聞いています。

鈴木  「コカ・コーラ プラス」の開発は、日本で年々高まる健康に対する意識やニーズに対して、お茶飲料だけでなく「コカ・コーラ」でも応えたいという思いから始まりました。ですので、消費者のみなさまが期待する機能をお届けすることは重要な責務でしたが、それ以上に大切にしていたのは、「コカ・コーラ」ブランドとしてふさわしい味です。ザ コカ・コーラ カンパニー(米国本社)の主導のもと、グローバルな視点での開発で100種類以上の試作品をつくるなど、徹底して味にこだわりました。

ーー 「コカ・コーラ プラス」は、どのような方々が手にしているのでしょうか。

鈴木  トクホの「コカ・コーラ」ということで、これまで「コカ・コーラ」をあまり飲まれていなかった方々にも手にとっていただけるようになりました。通常の「コカ・コーラ」と比べると、40~50代の購買者数が多いのが特徴で、この世代はやはり健康志向が高いといえるかもしれません。

多くの試作を重ね、初めて飲料にティソロサイドを配合

ーー 「コカ・コーラ」「スプライト」「カナダドライ ジンジャーエール」などの炭酸飲料には、健康的なイメージがつきにくい印象がありますが、実際にトクホ・機能性飲料を開発・発売されていかがでしたか?

鈴木  確かに、それらのブランド製品は、「甘み」があるため、一見すると機能への結びつきが弱いように思われがちですが、お客さまからの反響は大きかった。やはり、ブランドとおいしさへの信頼感があり、”機能”を付加価値としてとらえていただけているのだと考えています。一方で開発の立場からは、ゼロキロカロリーの飲料がすでに市場に根付いていたことも重要でした。“ゼロキロカロリーに機能性素材が加わった飲料”として、お客さまによりスムーズに受け入れられたのだと思います。

ーー 他のブランドからも機能が付加された製品が今年は次々と誕生しました。なかでも、ローズヒップ由来のティリロサイドを配合した飲料の登場は新鮮でした。

鈴木  そうですね。飲料では「からだ巡茶 Advance」が初めてです。開発では、味と風味のバランスをとるのが難しかった。ローズヒップ由来のティリロサイドは、ローズヒップの種子に多い成分で苦みや渋みが少ないとはいえ、当然、味に影響を与えます。ブレンド茶で無糖ですので、なおさら茶葉のバランスが味や風味を大きく左右するので、多くの試作を重ねました。

話をする鈴木卓人さんのクローズアップ

Profile 鈴木卓人(すずき・たくと) 2014年、日本コカ・コーラ株式会社技術・サプライチェーン本部入社。

原料サプライヤーの工場品質監査と、原料の品質管理を担当。

2016年、株式会社コカ・コーラ東京研究開発(R&D)センター製品開発部門へ。機能性素材の探索や評価、機能性飲料、酸性飲料、茶飲料など幅広いカテゴリーの製品開発を担当している。

機能を科学的かつ客観的に、正確に判断することが重要

ーー 近年、保健機能食品をこれほど多彩な製品で揃えられた背景には、どのようなものがあったのでしょうか。

鈴木  日本人の健康へのニーズが高まっていることが大きな背景だと思います。また、機能性表示食品制度がスタートしたことで、素材の機能や魅力をお客さまに飲料を通じてより伝えやすくなってきたという面もあります。ドラッグストアに並ぶサプリメントは実に様々な種類があり、ニーズも増えています。このようなことからも、日本人の健康志向の高まりがよくわかります。ただ、サプリメントに配合されている成分は安定性の観点で必ずしも飲料にできるとは限りませんし、味に影響も与えます。飲料にどのような成分を配合して、おいしさを損なうことなく機能性を高めるか、そこにいつも頭を悩ませています。

ーー 鈴木さんは、開発チームでは主にどのような仕事を担当されているのですか?

鈴木  飲料に配合する「素材」の探索や研究、そして実際の飲料開発が主な仕事です。飲料に使えて、機能性のある素材を探し出し、お茶や酸性飲料などの多彩なブランドの各製品とどうマッチングさせるか。機能と味のバランスなどを総合的に考え、提案します。一方で、その素材の機能として、科学的に正しいエビデンスがあるのかなどを検証していくのも私の仕事です。一般的に「効果がある」とされている素材でも、論文などのデータを読み込んでいくと科学的に不確かな場合もある、製品をお客さまに自信を持ってお届けするためには、機能を科学的かつ客観的に、そして正確に判断することが重要だと思っています。

目指すのは、“ニーズ”と“シーン”が合う飲料

ーー 「血糖値」「体脂肪」「健やかな眠り」など、これまで消費者の健康ニーズにアプローチする製品群をつくられていますが、今後はどのような製品を開発される予定ですか?

鈴木 脂肪吸収抑制や体脂肪の減少に関する機能は、マーケットの規模を見ても最も大きなニーズだととらえています。一方で、L-テアニンを関与成分とした、健やかな眠りのサポートをする機能のニーズも大きいと考えています。L-テアニンは、サプリメントに配合される素材としては知られていましたが、飲料としての使用例は多くありませんでした。それを製品化することで、よい反響を多くいただくことができました。今後もさらに、より多くの人々の健康ニーズに寄り添うことのできる素材を見つけて、製品を作っていきたいですね。今、開発・研究中の素材を用いて、トクホ・機能性飲料として、近いうちに新製品をお届けできるかもしれません。

ーー 日本人の飲料へのニーズは今後どのように変化していくと思われますか?

鈴木 飲料に求めるニーズは今よりさらに多角的になっていくと思います。ですので、飲むシーンとそのときにお客さまが何を求めているかが最も大切だと考えています。例えば、リフレッシュしたいときには赤い「コカ・コーラ」を手にしていただき、食事の含まれる脂肪の吸収をケアしたいときには、「からだすこやか茶W」を手にしていただく、といったそれぞれの飲用シーンに適した価値を提供できるようにしていきたいですね。

もちろん、コカ・コーラ社の開発担当者の最大のテーマは「おいしさの点で妥協があってはいけない」ということ。特に“機能をうたった製品”では、おいしく飲めて、普段の生活の中に自然に取り入れられるということが、難しくもあり最も重要な点だと思っています。

ーー 日本のように日常的に飲む「飲料」に健康機能を求める傾向は、今後、世界的なニーズになっていくと思いますか?

鈴木 そう思います。ただ、そのためには、日本の「トクホ」のような制度が海外の国でも創られることが重要なポイントになると思います。機能性素材の飲料があったとしても制度が整っていないと、お客さまが飲料の機能に興味を持ちにくいと思います。例えば、「『コカ・コーラ プラス』には難消化性デキストリンが含まれています」といってもよくわからないですよね。でも、トクホだといわれると、「どんな機能があるのだろう」「どのような成分が含まれているのだろう?」と興味がわいてきます。今後、各国で制度が確立されて、海外でも広まっていくことを大いに期待しています。

椅子に座り机に手を置いて微笑む鈴木卓人さん

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